性質および化学反応
ポロニウムは１８９８年にキュリー夫人によりウラン鉱であるピッチブレンドからラジウムに先立ち発見され、祖国のポーランドにちなみ命名された。現在では210Poが、209Bi(n,γ)210Bi → 210Po + β-の反応でグラムオーダーで得られている。
化学的性質はテルルに類似するが、より金属性が強く銀灰色を呈する。２価の陰イオンを形成する傾向はテルルよりさらに弱くなる。
最近、ロシアの保安局元幹部のアレクサンドル・リトビネンコ氏がイギリスで殺害された事件は致死量の10倍（約10万分の1g）の210Poを盛られたものといわれている。ポロニウムは民間で簡単に入手できるものではなく、放射能測定からポロニウムが運ばれた形跡をたどることができ、犯罪に使用するには賢明な手段でなかったといえる。
放射性元素
自然界における存在
天然に最も多く存在すると考えられる210Poは238Uをスタートとするウラン系列の中間壊変生成物で、ウラン鉱から生成したポロニウムは、ウラン１トンにつき74μgの量が定常的に存在している。214Poおよび218Poもウラン系列の中間壊変生成物として定常的に存在し、211Poおよび215Poはアクチニウム系列、212Poおよび216Poはトリウム系列の中間壊変生成物として定常的に存在する。
タバコの葉からもごく微量の210Poが検出され、タバコの有害成分のひとつに挙げられている。これはタバコの栽培で多く使用されるリン酸化学肥料の中に含まれるウランの改変生成物を吸収したものか、または葉がウランから放出されるラドンガスを吸着し、これの壊変生成物が残存したものであろうと考えられている。
工業的用途
静電気を除去するイオナイザーおよび原子力電池のα線源として用いられる。
主な化合物
化合物中のポロニウムの酸化数には+2, +4などが存在し-2は存在するが不安定である。
| Po(SO4)2 |
硫酸ポロニウム(Ⅳ) |
Polonium(Ⅳ) Sulfate |
| PoO2 |
酸化ポロニウム(Ⅳ) |
Polonium(Ⅳ) Oxide |
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