性質および化学反応
銀白色の金属元素であるが空気中で酸化されやすく酸化バリウムとなり、酸素中で加熱すると過酸化バリウムを生成する。水とは激しく反応して水素ガスを発生し水酸化バリウムを生ずる。希塩酸とは激しく反応するが、希硫酸では直ちに硫酸バリウムの皮膜で覆われ反応が停止する。液体アンモニアに溶解し、青色の溶液を生ずる。薄い黄緑色の炎色反応を示す。
カルシウムに類似するが、硫酸塩の溶解度が著しく小さいなど性質が多少異なり、水溶性の化合物および胃酸に溶解しやすい炭酸バリウムは著しい毒性を示す。
大気中での酸化 |
2Ba + O2 → 2BaO |
ΔH °= -1107.0kJ |
過剰の酸素との反応 |
2BaO + O2 → 2BaO2 |
ΔH °= -161.6kJ |
水との反応 |
Ba + 2H2O → Ba(OH)2 + H2 |
ΔH °= -425.97kJ |
バリタ水と二酸化炭素との反応 |
Ba(OH)2aq + CO2(g) → BaCO3(s)↓ + H2O |
Ksp = 2.6×10-9 |
バリウムイオンと硫酸イオンとの反応 |
Ba2+aq + SO42-aq → BaSO4(s)↓ |
Ksp = 1.08×10-10 |
バリウムの単体
自然界における存在
独自の鉱物を形成することが多く、毒重石BaCO3、重晶石BaSO4などがあり、いずれも斜方晶系に属しストロンチウムと共存することが多い。またイオン半径がカリウムイオンに近いため、火成岩中では主に正長石のカリウムの一部を置換して存在している。花崗岩中に多く集中しているため、宇宙存在比と比較して地表での存在度は相対的に高い。
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重晶石 中国湖南省産 | 砂漠のバラ(重晶石) オクラホマ州産 |
毒重石 アメリカイリノイ州産
工業的用途
硫酸バリウムは水に難溶性であり、バリウムは原子量が大きくX線を通しにくいため、胃のX線検査用の造影剤「バリウム」として用いられる。エジプトのピラミッドの前面にあるスフィンクスは長年の年月の経過により崩壊の危機にさらされており、その対策として胴体に水酸化バリウム水溶液を吹き付けることにより、二酸化炭素を吸収して炭酸バリウムが結晶化して崩壊を防止することが行われている。
ぺロブスカイト型構造のチタン酸バリウムBaTiO3は比誘電率が約5000と非常に高く、セラミックコンデンサーの強誘電体として用いられる。
主な化合物
化合物中ではバリウムは常に2価の陽イオンBa2+として存在する。
BaO |
酸化バリウム |
Barium Oxide |
Ba(OH)2·8H2O |
水酸化バリウム八水和物 |
Barium Hydroxide Octahydrate |
BaCO3 |
炭酸バリウム |
Barium Carbonate |
BaCl2·2H2O |
塩化バリウム二水和物 |
Barium Chloride Dihydrate |
BaSO4 |
硫酸バリウム |
Barium Sulfate |
Ba(NO3)2 |
硝酸バリウム |
Barium Nitrate |
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