性質および化学反応
銀白色の軽金属で、乾燥した空気中では表面が酸化され、湿った空気中では内部まで酸化物および水酸化物になる。空気中および窒素中で高温に加熱すると明るい光を発して燃焼し、二酸化炭素中でも黒煙を上げて燃焼する。冷水とは極めてゆっくり、熱水とは少しずつ反応しアルカリ性となり、希塩酸および希硫酸とは速やかに反応し水素ガスを発生する。塩化アンモニウム水溶液とも反応する。
無色の2価の陽イオンMg2+が安定であり、カルシウムとある程度の類似性を示すが、水酸化物Mg(OH)2は水に難溶で(Ksp = 5.6×10-12)飽和水溶液のpH = 10.5であり、硫酸塩MgSO4が水溶性であるなど、他のアルカリ土類金属とはやや性質が異なる。
Grignard試薬はエーテル中で臭化アルキルにマグネシウムを反応させて得られる有機金属であり、イオン性が強くアルキル陰イオンがカルボニル基などを攻撃して新たな結合を生成するため、有機合成に用いられる。
大気中での燃焼 |
2Mg + O2 → 2MgO |
ΔH °= -1203.4kJ |
窒素中での燃焼 |
3Mg + N2 → Mg3N2 |
ΔH °= -460.7kJ |
二酸化炭素中での燃焼 |
2Mg + CO2 → 2MgO + C |
ΔH °= -809.9kJ |
熱水との反応 |
Mg + 2H2O → Mg(OH)2 + H2
| ΔH °= -355.18kJ |
塩酸との反応 |
Mg + 2HCl → MgCl2 + H2 |
アンモニウム塩との反応 |
Mg + 2NH4+ → Mg2+ + 2NH3 + H2 |
Grignard試薬の生成 |
Mg + RBr → RMgBr |
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マグネシウムの単体 | マグネシウムの燃焼 |
自然界における存在
自然界に単体として存在することは皆無であり、マグネシウムイオンMg2+として存在する。地球内部に多量に存在する元素であると考えられ、マントルはカンラン石Mg2SiO4を多量に含むものと思われる。玄武岩中にも輝石Mg2Si2O6として多量に含まれる。海水中にもナトリウムイオンに次いで多く溶存し、にがりの主成分は塩化マグネシウムである。ドロマイト(苦灰石)CaMg(CO3)2は炭酸カルシウムとの復塩であり、海水と共にマグネシウム資源として利用される。スピネル(尖晶石)MgAl2O4は立方晶系で、酸化物イオンが面心立方格子をなし、この正四面体型4配位サイトの1/8をMg2+が占め、正八面体型6配位サイトの1/2をAl3+が占める結晶構造で美しいものは宝石にされる。
葉緑素はクロロフィルとも呼ばれ、ポルフィリン環の中心部にマグネシウムイオンが位置している。
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カンラン石(ぺリドット) パキスタン産 | ドロマイト上のスピネル ミャンマー産 |
工業的用途
構造材料として用いられる金属としては最も軽いため、軽合金として、自動車の車軸、スポーツ用自転車のフレームなどに用いられる。酸素と強く結合するため、合金用金属の脱酸用に少量添加される場合もある。塩素酸カリウムとの混合物は花火に用いられ、かつては写真撮影のフラッシュにも用いられた。
主な化合物
化合物中ではマグネシウムは常に2価の陽イオンMg2+として存在する。
MgO |
酸化マグネシウム |
Magnesium Oxide |
Mg(OH)2 |
水酸化マグネシウム |
Magnesium Hydroxide |
MgCO3 |
炭酸マグネシウム |
Magnesium Carbonate |
MgCl2·6H2O |
塩化マグネシウム六水和物 |
Magnesium Chloride Hexahydrate |
MgSO4·7H2O |
硫酸マグネシウム七水和物(瀉痢塩) |
Magnesium Sulfate Heptahydrate (Epsom Salt) |
Mg(NO3)2·6H2O |
硝酸マグネシウム六水和物 |
Magnesium Nitrate Hexahydrate |
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