性質および化学反応
ヒ素は漢字で「砒素」と書くが、これは常用漢字ではないためカタカナが使用される。化合物には強い毒性を示すものが多く、昔から毒殺に使用されてきた。単体には各種の同素体が存在し、このうち灰色ヒ素は金属光沢のある銀灰色、三方晶系の固体で金属並みの電気伝導度(抵抗率:2.6×10-7Ω·m, 0℃)を示すが、脆く延性および展性に乏しく、高温では1気圧の条件下で融解する前に昇華する。濃硝酸および熱濃硫酸により酸化されヒ酸を生成する。
同素体である黄色ヒ素は単体の蒸気を急冷することにより得られる立方晶系のもろい固体であり、四面体型4原子分子As4で構成される。
濃硝酸との反応 |
As + 5HNO3 → H3AsO4 + 5NO2 + H2O |
ヒ素の単体
自然界における存在
ヒ素は硫化鉱物中に存在することが多く、硫砒鉄鉱FeAsS、淡紅銀鉱Ag3AsS3、鶏冠石AsSおよび雌黄As2S3などが主な鉱物である。単体の自然ヒ素として産出することもある。
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硫砒鉄鉱 中国広西自治区産 | 淡紅銀鉱(赤色部分) モロッコ産 |
工業的用途
三酸化二ヒ素は亜ヒ酸とも呼ばれる猛毒物質で、殺鼠剤および農薬などに用いられてきた。ガリウムヒ素GaAsは優れた半導体で各種電子部品に用いられる。
主な化合物
化合物中のヒ素の酸化数には-3, +3, +5などが存在する。
AsH3 |
アルシン |
Arsine |
As2O3 |
三酸化二ヒ素(無水亜ヒ酸) |
Diarsenic Trioxide |
H3AsO4 |
ヒ酸 |
Arsenic Acid |
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