性質および化学反応

　銀白色の金属元素であり、希塩酸および希硫酸にたやすく溶解し無色の３価の陽イオンGd³⁺を生成する。単体金属は強磁性を示し、キュリー点は291.2 Kで、室温以下では磁石に吸い付けられる。

薄い酸との反応

2Gd + 6H⁺ → 2Gd³⁺ + 3H₂

ガドリニウムの単体

自然界における存在

　モナズ石(La,Ce)PO₄中に軽ランタノイド元素(La～Gd)と共存することも、ゼノタイムYPO₄中に、重ランタノイド元素(Gd～Lu)と共存することもある。

工業的用途

　¹⁵⁷Gdは中性子吸収能が最大であるため、原子炉の緊急停止材として用いられる。また光磁気ディスクの磁性材料に使用される。ガドリニウムの磁気熱量効果を利用して、フロンガスフリーの高効率の冷蔵庫が開発されている。
　ガドリニウムガリウムガーネットGd₃Ga₂(GaO₄)₃は断熱消磁により吸熱してエントロピーが増大し、磁化により発熱するという性質を利用して、液体ヘリウムなどの冷媒を用いない冷却装置に用いられる。

主な化合物

化合物中ではガドリニウム原子の酸化数は+3が安定である。

Gd₂O₃	酸化ガドリニウム	Gadolinium Oxide
Gd₂(SO₄)₃·8H₂O	硫酸ガドリニウム八水和物	Gadolinium Sulfate Octahydrate

電子配置	1s²2s²2p⁶3s²3p⁶3d¹⁰4s²4p⁶4d¹⁰4f⁷5s²5p⁶5d¹6s² [Xe]4f⁷5d¹6s²
第一イオン化エネルギー	593.4 kJ/mol	6.150 eV
電子親和力	kJ/mol	eV

密度	7.9004 g/cm³ (25℃)
結晶格子	六方最密充填格子(hcp)　a=3.636Å, c=5.783Å
熱容量Cp（比熱）25℃	37.03 J/mol K (0.0563 cal/g K)
融点	1313℃
沸点	3270℃

地殻中存在比	5.4 ppm
海水中存在比	0.9×10^-3 ppb
大気中存在比	-
宇宙存在比(Si=10⁶)	0.33

同位体
核種	相対質量	スピンパリティー	半減期	天然存在比	壊変
¹⁴⁶Gd	145.918310608	0⁺	48.27 d	-	EC99.93, β⁺0.07
¹⁴⁷Gd	146.91909442	7/2^-	1.586 d	-	EC99.74, β⁺0.26
¹⁴⁸Gd	147.918114524	0⁺	74.6 yr	-	α
¹⁴⁹Gd	148.919340915	7/2^-	9.28 d	-	EC, β⁺, α4.3×10^-4
¹⁵⁰Gd	149.918658876	0⁺	1.79×10⁶ yr	-	α
¹⁵¹Gd	150.920348482	7/2^-	124 d	-	EC, α8×10^-7
¹⁵²Gd	151.919790996	0⁺	1.08×10¹⁴ yr	0.20％	α, (2β⁺)
¹⁵³Gd	152.921749543	3/2^-	241.6 d	-	EC
¹⁵⁴Gd	153.920865598	0⁺	stable	2.18％	-
¹⁵⁵Gd	154.922622022	3/2^-	stable	14.80％	-
¹⁵⁶Gd	155.922122743	0⁺	stable	20.47％	-
¹⁵⁷Gd	156.923960135	3/2^-	stable	15.65％	-
¹⁵⁸Gd	157.924103912	0⁺	stable	24.84％	-
¹⁶⁰Gd	159.927054146	0⁺	＞3.1×10¹⁹ yr	21.86％	(2β^-)

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