性質および化学反応

　単体は銀灰色の重い金属元素であり、融点は金属中最も高い。塩酸および水酸化ナトリウム水溶液とはほとんど反応せず、濃硝酸と濃フッ化水素酸の混合溶液に溶解する。またタングステンを陽極として水酸化ナトリウム水溶液を電気分解すると溶解し、タングステン酸ナトリウムNa₂WO₄を生成する。
　元素記号WはWolframに由来し、これはスズの製錬の際、タングステンが存在すると強く結合するため、狼のようにスズをむさぼり食うという意味から命名された。

濃硝酸および濃フッ化水素酸との反応	W + 8HF + 6HNO₃ → 2H⁺ + WF₈^2- + 6NO₂ + 6H₂O
アルカリ水溶液中の陽極酸化	W + 8OH^- → WO₄^2- + 4H₂O + 6e^-

タングステンの単体

自然界における存在

　タングステン酸塩として存在することが多く、鉄マンガン重石(Mn,Fe)WO₄および灰重石CaWO₄などがある。


水晶と鉄マンガン重石　中国湖南省産	灰重石　中国四川省産

工業的用途

　最も融点の高い金属であるため、白熱電球のフィラメントの材料として用いられる。炭化タングステンWC粉末をコバルトをバインダーとして焼結したものは、超硬合金として切削工具などに用いられる。

主な化合物

化合物中ではタングステン原子は-2～+6のあらゆる酸化数をとるが+6が安定である。

WO₃	酸化タングステン(Ⅵ)	Tungsten(Ⅵ) Oxide
W(CO)₆	タングステンヘキサカルボニル	Tungsten Hexacarbonyl

電子配置	1s²2s²2p⁶3s²3p⁶3d¹⁰4s²4p⁶4d¹⁰4f¹⁴5s²5p⁶5d⁴6s² [Xe]4f¹⁴5d⁴6s²
第一イオン化エネルギー	733.5 kJ/mol	7.60 eV
電子親和力	78.6 kJ/mol	0.815 eV

密度	19.3 g/cm³ (20℃)
結晶格子	体心立方格子(bcc)　a=3.165Å
熱容量Cp（比熱）25℃	24.27 J/mol K (0.03155 cal/g K)
融点	3407℃
沸点	5555℃

地殻中存在比	1.5 ppm
海水中存在比	0.1 ppb
大気中存在比	-
宇宙存在比(Si=10⁶)	0.133

同位体
核種	相対質量	スピンパリティー	半減期	天然存在比	壊変
¹⁷⁸W	177.945876236	0⁺	21.6 d	-	EC
¹⁸⁰W	179.946704459	0⁺	1.8×10¹⁸ yr	0.12％	(α, 2β⁺)
¹⁸¹W	180.948197248	9/2⁺	121.2 d	-	EC
¹⁸²W	181.948204156	0⁺	stable	26.50％	-
¹⁸³W	182.950222951	1/2^-	＞1.3×10¹⁹ yr	14.31％	(α)
¹⁸⁴W	183.950931188	0⁺	＞2.9×10¹⁹ yr	30.64％	(α)
¹⁸⁵W	184.953419264	2/3^-	75.1 d	-	β^-
¹⁸⁶W	185.954364127	0⁺	＞2.7×10¹⁹ yr	28.43％	(2β^-, α)
¹⁸⁷W	186.957160466	3/2^-	23.72 hr	-	β^-
¹⁸⁸W	187.958489105	0⁺	69.4 d	-	β^-

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