性質および化学反応
１７７４年、J.Priestleyが酸化水銀を加熱して発生する気体が、物質の燃焼の原因であり、生物の呼吸にも必要な物質であることを発見した。A.L.Lavoisierは非金属元素の酸化物が酸性を示すことから、これらに含まれる酸素は酸性の素であると考え、Oxygenはギリシャ語の酸を作るものという意味から命名された。
単体には通常の酸素分子O2と三原子分子であるオゾンO3が存在する。酸素ガスは無色無臭の気体であり、各種元素と結合して酸化物を形成する。液体酸素は淡青色を呈し、酸素分子は常磁性であるため、強力な磁石に引き寄せられる。オゾンは酸素の無声放電により生成し、青色の刺激臭のある気体で、激しい酸化作用を示す。
酸素ガスは過酸化水素水に触媒として二酸化マンガンを加えるか、または固体の塩素酸カリウムに二酸化マンガンを加えて加熱することにより発生させることができる。
| 過酸化水素水の分解 |
2H2O2 → O2 + 2H2O (MnO2触媒) |
| 塩素酸カリウムの熱分解 |
2KClO3 → 3O2 + 2KCl (MnO2触媒) |
液体酸素 生物応用化学科体験入学より
自然界における存在
大気の20.95vol％は単体の酸素であるが、これはほんの一部に過ぎず、(1.18×1018 kg)海水中の水分子として存在する酸素は大気中の約1000倍に及び、(1.24×1021 kg)さらに岩石を形成するケイ酸塩および酸化物として、地殻及びマントルに最も多く存在する元素である。(1.8×1024 kg)地球を構成する元素としても最も多い存在である。
宇宙存在度では水素、ヘリウムに次いで３番目に多く存在する元素であり、太陽系の木星より外側の外惑星領域では主に氷として存在し、太陽系全体では岩石質の物質よりも２倍以上多い。冥王星および彗星などは主に氷が主成分であると推定されている。
地上の空気には約0.03 ppmのオゾンが含まれているが、成層圏の高度20 km付近では3 ppm程度と極大値を示しオゾン層と呼ばれる。オゾンは主として320 nmより短波長の生物にとって危険性の高い紫外線である、UV-BおよびUV-Cを吸収する。オゾンは主に成層圏上部で、波長が175〜240 nmの紫外線の作用により生成し、成層圏下部では波長が240〜320 nmの紫外線の作用により分解のほうが優勢となり平衡が保たれている。
| オゾン生成反応 |
O2 + hν → 2O
O + O2 + M → O3 + M |
| オゾン分解反応 |
O3 + hν → O2 + O
O + O3 → 2O2 |
酸素に恵まれる地球の大気
工業的用途
酸素およびアセチレンの混合物は約3800℃の高温で燃焼するため、溶接および鉄板の切断に用いられる。酸素と水素の混合物も高熱を出しながら燃焼するため、高融点の金属を融解させるために使用される。ロケットは燃料と伴に液体酸素を搭載している。
水道水は通常、塩素で殺菌されるが、有害な塩素の使用を避けるためにオゾンで処理されることもある。
主な化合物
| H2O |
水 |
Water |
| H2O2 |
過酸化水素 |
Hydrogen Peroxide |
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