性質および化学反応
銀灰色の金属元素で外観は鉄に似るが、より硬く脆く、薄い塩酸、硫酸などに速やかに溶解し、淡桃色の2価の陽イオンMn2+を生成する。空気中でも酸化されやすく黒褐色の酸化物で覆われる。
過マンガン酸イオンMnO4-は濃赤紫色を呈し、強い酸化作用を示し、有機物と反応しやすく、紫外線の作用で分解しやすい。硫酸酸性中では還元剤により2価の陽イオンになり、弱酸性から弱塩基性溶液中では二酸化マンガンまで還元される。
塩酸との反応 |
Mn + 2HCl → MnCl2 + H2 |
硫酸酸性中での過マンガン酸イオンの酸化作用 |
MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O |
E °= +1.512 V |
弱塩基性中での過マンガン酸イオンの酸化作用 |
MnO4- + 2H2O + 3e- → MnO2↓ + 4OH- |
E °= +0.588 V |
マンガンの単体
自然界における存在
主に火成岩中の有色鉱物に含まれ、普遍的に存在する元素であり、マンガン独自の鉱物としては軟マンガン鉱MnO2および、方解石と同じ結晶構造をとる菱マンガン鉱MnCO3などがある。
深海底にはマンガン団塊と呼ばれる、15〜30%程度のマンガンを始めコバルト、ニッケル、銅などが水和酸化物の形で含まれた円形状の塊が存在している。小片を核に海水に溶解していた金属イオンが沈着して生成したと考えられているが、通常の海水のpH = 8.3では重金属イオンは沈殿して、ほとんど溶存していないため、海底火山活動による熱水の噴出が関わっているのかも知れない。
菱マンガン鉱
工業的用途
酸化され易く脆い金属であるため単独で用いられることはほとんどないが、マンガンを少量添加したマンガン鋼は硬く丈夫であるので、レールおよび削岩機の歯先などに用いられる。二酸化マンガンは乾電池の正極活物質および、ガラスの色消し用に用いられる。
マンガン乾電池の放電反応 |
負極 |
Zn + 4NH3 → [Zn(NH3)4]2+ + 2e- |
正極 |
MnO2 + NH4+ + e- → MnOOH + NH3 |
主な化合物
化合物中ではマンガン原子の酸化数は+2,+4,+7をとることが多い。
MnCl2·4H2O |
塩化マンガン(Ⅱ)四水和物 |
Manganese(Ⅱ) Chloride Tetrahydrate |
MnO2 |
酸化マンガン(Ⅳ)(二酸化マンガン) |
Manganese(Ⅳ) Oxide |
KMnO4 |
過マンガン酸カリウム |
Potassium Permanganate |
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塩化マンガン(Ⅱ)四水和物 | 過マンガン酸カリウム |
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