性質および化学反応
銀白色の金属元素であり、希塩酸および希硫酸に徐々に溶解して無色の2価の陽イオンCd2+を生成する。うすい水酸化ナトリウムとはほとんど反応しない。水酸化カドミウムは水酸化亜鉛よりも塩基性が強く、亜鉛のようなアルカリにも溶解する所謂両性を示す傾向は弱い。硫化カドミウムは硫化亜鉛よりも溶解度積がさらに小さく、酸性溶液からも硫化水素により沈殿する。
金属元素としては蒸気圧が高く、亜鉛精錬の際、不純物として含まれるカドミウムが先に蒸気として発生してくる。蒸気は水銀と同様毒性が強い。
かつて神通川流域で起きた公害病であるイタイイタイ病は、上流の神岡鉱山から流出した鉱毒であるカドミウムが原因であるとされている。
希硫酸との反応 |
Cd + H2SO4 → CdSO4 + H2 |
カドミウムイオンと硫化水素との反応 |
Cd2+aq + H2S(g) → CdS(s)↓ + 2H+aq |
Ksp = 1.2×10-33 |
カドミウムの単体
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神岡鉱山 岐阜県飛騨市神岡町 | スーパーカミオカンデ光電子増倍管 |
自然界における存在
カドミウムは同族の亜鉛と共存することが多く、閃亜鉛鉱中に1%以内の濃度で亜鉛原子を置換して存在している。稀に閃亜鉛鉱表面に黄色の硫化カドミウム鉱として独自の化合物を形成する場合もある。
工業的用途
単体は耐食性が高く、亜鉛めっきより水素脆性が低く、はんだとの相性がよいため、主に電気部品などにカドミウムめっきが行われる。しかしイタイイタイ病公害問題が起こったこともあり、わが国ではカドミウムめっきは行われなくなった。また鉛、スズ、ビスマスとの合金はウッド合金と呼ばれ融点が65℃程度のものがあり、ヒューズなどの低融点合金に用いられる。
二次電池のひとつであるニッケルカドミウム電池の負極活物質の材料として重要である。硫化カドミウムは鮮やかな山吹色を呈し、カドミウムイエローとして顔料に用いられる。
ニッケルカドミウム電池の充放電反応 |
負極 |
Cd + 2OH- |
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Cd(OH)2 + 2e- |
E °= -0.825 V |
正極 |
NiO(OH) + H2O + e- |
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Ni(OH)2 + OH- |
E °= +0.48 V |
主な化合物
CdO |
酸化カドミウム |
Cadmium Oxide |
CdS |
硫化カドミウム |
Cadmium Sulfide |
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