性質および化学反応

 リンは漢字で「燐」と書くが、これは常用漢字ではないためカタカナが使用される。単体には黄リン、赤リンおよび黒リンなどの同素体が存在し、黄リンは四面体型の四原子分子P4で純粋なものは無色、多少変質し微量の赤リンが生成したものは淡黄色の蝋状の軟らかい固体で、極めて発火しやすい猛毒の物質であり、通常は水中に保存する。アルカリ水溶液と加熱すると反応しホスフィン酸塩とホスフィンを生成する。このホスフィンは空気に触れると自然発火する。
 赤リンは黄リンを空気を遮断し高圧下で加熱することにより得られる暗赤紫色の固体であり、黄リンほど激しく発火することも無く、毒性も少ない。黒リンは灰黒色の金属光沢を示す固体であり、リンの同素体の中では最も反応性が弱く、半導体としての性質を示す。

黄リンの燃焼 P4 + 5O2 → 2P2O5
水酸化カリウム水溶液との反応 P4 + 3KOH + 3H2O → 3KPH2O2 + PH3

リンの単体(赤リン)

自然界における存在

 リンを含む最も重要な資源鉱物は六方晶系をとるフッ素燐灰石Ca5F(PO4)3および水酸燐灰石(ヒドロキシアパタイト)Ca5(OH)(PO4)3であり、ヒドロキシアパタイトは骨および歯の成分でもある。燐灰石はモースの硬度計の基準鉱物で5度と定義される。藍鉄鉱Fe3(PO4)2・8H2Oは光により変色しやすい鉱物であり、その他希土類リン酸塩鉱物などがある。
フッ素燐灰石
藍鉄鉱 ボリビア産

工業的用途

 黄リンは少し摩擦するだけでも発火するため、初期のマッチに用いられていたが、自然発火や毒性などの問題から使用されなくなり、現在では、軸に硫黄および塩素酸カリウム、箱に赤リンおよび鉄粉を塗ったマッチが使用されている。シリコンに微量添加してN型半導体として用いられる。
 燐鉱石は化学肥料用としての用途が最も多く、硫酸と反応させた過リン酸石灰および蛇紋岩と伴に融解した溶性燐肥などがある。しかしリン鉱石はしばしばウランを含むため放射能汚染の可能性を秘めている。

主な化合物

化合物中のリンの酸化数には-3, +1, +3, +5などが存在する。

PH3 ホスフィン Phosphine
HPH2O2 ホスフィン酸 Phosphinic Acid
H2PHO3 ホスホン酸 Phosphonic Acid
P2O5 五酸化二リン Diphosphorus Pentoxide
H3PO4 リン酸 Phosphoric Acid



電子配置
1s22s22p63s23p3
[Ne]3s23p3
第一イオン化エネルギー
1011.8 kJ/mol
10.486 eV
電子親和力
71.7 kJ/mol
0.7465 eV
密度
1.82 g/cm3 (黄リン r.t.)
2.20 g/cm3 (赤リン r.t.)
2.70 g/cm3 (黒リン r.t.)
結晶格子
黒リン 斜方格子 a=3.31Å, b=4.38Å, c=10.48Å
熱容量Cp(比熱)25℃
黄リン23.840 J/mol K (0.18396 cal/g K)
赤リン21.21 J/mol K (0.1637 cal/g K)
融点
44.1℃ (黄リン)
589.5℃ (赤リン 43.1 atm)
沸点
280.5℃ (黄リン)
430℃ (赤リン 36 atm)
地殻中存在比
1050 ppm
海水中存在比
50 ppb
大気中存在比
-
宇宙存在比(Si=106)
10400


同位体
核種
相対質量
スピンパリティー
半減期
天然存在比
壊変
30P

29.978313789

1+
2.498 min
-
β+, EC
31P

30.973761629

1/2+
stable
100.00%
-
32P

31.973907274

1+
14.262 d
trace
β-
33P

32.971725543

1/2+
25.34 d
-
β-


n
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
Rb
Sr
Y
Zr
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
Cs
Ba
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
Fr
Ra
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
Rg
Uub
Uut
Uuq
Uup
Uuh
Uus
Uuo
La
Ce
Pr
Nd
Pm
Sm
Eu
Gd
Tb
Dy
Ho
Er
Tm
Yb
Lu
Ac
Th
Pa
U
Np
Pu
Am
Cm
Bk
Cf
Es
Fm
Md
No
Lr



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