性質および化学反応
銀白色の非常に硬い金属元素で酸およびアルカリに対する耐食性はきわめて高い。王水でさえ、微粉末状のものでないと反応しにくい。化合物を合成するためにはイリジウム粉末と塩化カリウムの混合物に900℃で塩素ガスを通じて反応させる必要がある。空気中で高温に加熱すると酸化されるが、1000℃以上になると酸化物は再び分解して単体になる。密度は非常に高く、物質中ではオスミウムに次いで2番目である。
元素名はイリジウム化合物の色は多様なものが存在することから、ギリシャ語の虹を意味するIrisから命名された。
塩化カリウムおよび塩素ガスとの反応 |
Ir + 2KCl + 2Cl2 → K2[IrCl6] |
イリジウムの単体
自然界における存在
イリジウムなどの白金族元素は地球中心部の核にppm単位で含まれているものと考えられるが、地上の岩石圏では存在は稀である。火成岩中では白金族元素は主に橄欖岩などに極少量含まれ、これが風化し粒子が成長したものがイリドスミン(イリジウム含量の多いものは自然イリジウム)と呼ばれるイリジウムにオスミウムなどの白金族元素を含む自然合金であり、河川で砂鉱として採取される。
イリジウムは隕鉄中には3ppm程度含まれ、この含有量は地上の一般の岩石中の量よりもはるかに高いため、イリジウムが濃縮している場所には隕石が落下した可能性が高いと考えられる。
6500万年前にユカタン半島に巨大隕石が落下し、恐竜の絶滅の引き金となったという説は、この時代の地層のイリジウム含有量が異常に高いことから説明されている。
イリドスミン 弥永北海道博物館 北海道産
工業的用途
白金に10%程度イリジウムを加えた合金は硬く傷がつきにくいため、キログラム原器およびメートル原器はこの合金で造られている。酸化されにくく耐熱性も高いことから、エンジン内の点火プラグに使用されている。また万年筆のペン先の突端についている小さな銀白色の金属はイリジウムとオスミウムの合金である。
主な化合物
化合物中ではイリジウム原子の酸化数は+3,+4をとることが多い。
Ir2O3 |
酸化イリジウム(Ⅲ) |
Iridium(Ⅲ) Oxide |
H2[IrCl6] |
ヘキサクロロイリジウム(Ⅳ)酸 |
Hexachloroiridic(Ⅳ) Acid |
|