性質および化学反応

　銀灰色の金属元素で空気中では表面が徐々に酸化され変色する。塩酸および希硫酸とはほとんど反応せず、硝酸とは表面に酸化皮膜を形成し反応が停止する。硝酸とフッ化水素との混合物に溶解し、フルオロ錯体を生成する。

モリブデンの単体

自然界における存在

　最も普通に産出するモリブデン鉱物は輝水鉛鉱MoS₂で、黒鉛のように非常に薄くはがれやすい鉱物であり、モリブデンのことを水鉛ともいう。
　マメ科植物と共生する根粒細菌はモリブデンを含む酵素により空気中の窒素を固定する。これは窒素分子のモリブデン原子への配位結合生成が第一段階反応となり、続いて電子移動により還元され、アンモニアとなる。また飲酒により体内で生成するアセトアルデヒドを酸化させ、無害な酢酸に変える酵素もモリブデンを含む。

輝水鉛鉱

工業的用途

　日本刀の強度の秘密は微量に含まれるモリブデンであるといわれている。クロムとモリブデンを加えた、クロモリ鋼は高張力鋼とも呼ばれ高い強度を有し、薄く軽いパイプは自転車のフレームなどに用いられ、またレンチなどの工具の材料としても用いられている。

主な化合物

化合物中ではモリブデン原子は-2～+6のあらゆる酸化数をとるが+6が安定である。

MoO₃	酸化モリブデン(Ⅵ)	Molybdenum(Ⅵ) Oxide
(NH₄)₂MoO₄	モリブデン酸アンモニウム	Ammonium Molybdenate
Mo(CO)₆	モリブデンヘキサカルボニル	Molybdenum Hexacarbonyl

電子配置	1s²2s²2p⁶3s²3p⁶3d¹⁰4s²4p⁶4d⁵5s¹ [Kr]4d⁵5s¹
第一イオン化エネルギー	684.97 kJ/mol	7.099 eV
電子親和力	72.0 kJ/mol	0.746 eV

密度	10.22 g/cm³ (20℃)
結晶格子	体心立方格子(bcc)　a=3.1468Å
熱容量Cp（比熱）25℃	24.06 J/mol K (0.0599 cal/g K)
融点	2623℃
沸点	4682℃

地殻中存在比	1.5 ppm
海水中存在比	10 ppb
大気中存在比	-
宇宙存在比(Si=10⁶)	2.55

同位体
核種	相対質量	スピンパリティー	半減期	天然存在比	壊変
⁹²Mo	91.906810991	0⁺	＞3×10¹⁷ yr	14.84％	(2β⁺)
⁹³Mo	92.90681261	5/2⁺	4.0×10³ yr	-	EC
⁹⁴Mo	93.905088269	0⁺	stable	9.25％	-
⁹⁵Mo	94.905842129	5/2⁺	stable	15.92％	-
⁹⁶Mo	95.904679477	0⁺	stable	16.68％	-
⁹⁷Mo	96.906021465	5/2⁺	stable	9.55％	-
⁹⁸Mo	97.905408169	0⁺	＞1×10¹⁴ yr	24.13％	(2β^-)
⁹⁹Mo	98.90771187	1/2⁺	2.7475 d	-	β^-
¹⁰⁰Mo	99.907477336	0⁺	1.2×10¹⁹ yr	9.63％	2β^-

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