性質および化学反応
銀白色の軟らかい金属元素であり、乾燥した空気中では比較的安定であるが湿気がある場合は速やかに酸化され黒変する。密度は金属元素中最も低く、アルミニウムの5分の1程度で乾燥した木材に匹敵し、灯油にも浮かぶ。水との反応は次第に激しさを増し、量が多い場合は発火し赤色の炎を上げて燃焼する場合がある。アルコールとも反応しリチウムアルコキシドと水素を生成する。水素や窒素とも直接反応し、それぞれ水素化物および窒化物を生成する。これらはイオン結晶であり、それぞれ水素化物イオンH-および窒化物イオンN3-を含む。
他のアルカリ金属とは性質が異なり、塩類の溶解度の点ではイオン半径の近いマグネシウムに類似する。炭酸リチウムLi2CO3は比較的難溶性で高温になるほど溶解度が低くなり、塩化物LiClおよび過塩素酸塩LiClO4などは潮解性を持ちアルコールなどの有機溶媒にも易溶である。水酸化リチウムLiOHは強塩基であるが、他のアルカリ金属の水酸化物とは異なり潮解性を持たず、この族の水酸化物中では塩基性は弱い。
リチウム塩類は著しい紅色の炎色反応を示す。水溶液中でのイオン化電位は金属単体の中で最も低く-3.040 V (Li+/Li)を示す。
水との反応 |
2Li + 2H2O → 2LiOH + H2 |
ΔH °= -445.31kJ |
水素との反応 |
2Li + H2 → 2LiH |
ΔH °= -181.08kJ |
窒素との反応 |
6Li + N2 → 2Li3N |
ΔH °= -328.8kJ |
リチウムの単体
自然界における存在
他のアルカリ金属と比較してイオン半径が小さいため、長石などのナトリウムおよびカリウムを置換することはほとんどない。輝石や雲母などのマグネシウムイオンを置換したり、リチア輝石LiAlSi2O6などの独自の鉱物を形成して存在する。
リチア輝石 アフガニスタン産
工業的用途
リチウムは酸化還元電位が金属元素中最も低く、原子量が小さいため高いエネルギー密度を持ち、3Vの起電力を有するコイン型電池の負極として用いられる。また充放電の可能なリチウム二次電池は3.6Vの起電力を有し、携帯電話、パソコンおよびデジタルカメラなどの電源として用いられている。1990年代の携帯電話の普及はリチウム二次電池の開発による小型化が大きく貢献している。金属リチウムは水と激しく反応するため電解液として水溶液を用いることはできず、炭酸エステルなどの有機溶媒が用いられる。
核融合の研究が進行中であるが、最も実現の可能性があるのは重水素と三重水素との反応2H + 3H → 4He + 1nである。
ここで使用される三重水素は天然には痕跡量しか存在しないので6Liに中性子を照射6Li + 1n → 3H + 4Heして製造する。この目的に使用するため、天然リチウムから6Liを抽出した残りの7Liが濃縮された試薬が出回っており、試薬中のリチウムの原子量には変動のある場合がある。
リチウム二次電池の充放電反応 |
負極 |
CLin |
 |
C + nLi+ + ne- |
正極 |
Li1-nCoO2 + nLi+ + ne- |
 |
LiCoO2 |
主な化合物
化合物中ではリチウムは常に1価の陽イオンLi+として存在する。
Li2O |
酸化リチウム |
Lithium Oxide |
LiOH |
水酸化リチウム |
Lithium Hydroxide |
Li2CO3 |
炭酸リチウム |
Lithium Carbonate |
LiCl |
塩化リチウム |
Lithium Chloride |
Li2SO4 |
硫酸リチウム |
Lithium Sulfate |
LiNO3 |
硝酸リチウム |
Lithium Nitrate |
|