性質および化学反応

 銀灰色の金属元素で、安定同位体は存在しない放射性元素である。1937年イタリアのSegréは、カリフォルニア大学で重陽子の加速に使用されていたサイクロトロン内のモリブデン製偏光板を分析し、モリブデン原子に重水素核を衝突させることにより96Mo + 2H → 97Tc + 1nの核反応で生成したテクネチウムを見出した。
 研究などで使用されているテクネチウムは全て人工的に合成されたもので、原子炉内の核分裂生成物から抽出されている。235Uの核分裂生成物は質量数140付近と質量数95付近のものが多く、後者の中性子過剰核種がβ壊変によりテクネチウムなどを生成するが質量数97および98のものはモリブデンの安定同位体として核反応が完結するため、テクネチウムでマクロ量で得られているものは99Tcのみであり、235Uの熱中性子による核分裂収率は6.1%である。
 化学的性質はレニウムに類似するが酸化テクネチウムTc2O7(Ⅶ)は同種のレニウム酸化物より揮発性で、過テクネチウム酸イオンTcO4-を含む酸性水溶液から蒸発させることができる。単体金属は酸素ガス中で燃焼して昇華性の酸化物Tc2O7を生成し、これを水に溶解すると強酸である過テクネチウム酸HTcO4を生成する。
放射性元素

自然界における存在

 天然には238Uの自発核分裂の生成物としてウラン鉱石中にウラン1トンあたり0.64μgの99Tcが存在するのみである。

工業的用途

 腫瘍診断剤など放射線診断薬として利用されている。低濃度の過テクネチウム酸イオンTcO4-は、鉄鋼の防食作用があるといわれているが、通常用いられているという話は聞かない。

主な化合物

化合物中ではテクネチウム原子は7価として存在することが多い。

Tc2O7 酸化テクネチウム(Ⅶ) Technetium(Ⅶ) Oxide
HTcO4 過テクネチウム酸 Pertechnetic Acid



電子配置
1s22s22p63s23p63d104s24p64d55s2
[Kr]4d55s2
第一イオン化エネルギー
702 kJ/mol
7.28 eV
電子親和力
53 kJ/mol
0.55 eV
密度
11.50 g/cm3 (calc.)
結晶格子
六方最密充填格子(hcp) a=2.743Å, c=4.400Å
融点
2172℃
沸点
4880℃
地殻中存在比
  ppm
海水中存在比
  ppb
大気中存在比
 
宇宙存在比(Si=106)
 


同位体
核種
相対質量
スピンパリティー
半減期
天然存在比
壊変
95Tc

94.907657084

9/2+
20.0 hr
-
EC
96Tc

95.907871383

7+
4.28 d
-
EC
97Tc

96.906365358

9/2+
2.6×106 yr
-
EC
98Tc

97.907215966

(6)+
4.2×106 yr
-
β-
99Tc

98.906254747

9/2+
2.111×105 yr
trace
β-


n
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
Rb
Sr
Y
Zr
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
Cs
Ba
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
Fr
Ra
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
Rg
Uub
Uut
Uuq
Uup
Uuh
Uus
Uuo
La
Ce
Pr
Nd
Pm
Sm
Eu
Gd
Tb
Dy
Ho
Er
Tm
Yb
Lu
Ac
Th
Pa
U
Np
Pu
Am
Cm
Bk
Cf
Es
Fm
Md
No
Lr



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