性質および化学反応

　原子番号がウラン、ネプツニウムに次ぐ元素として、冥王星Plutoにちなんで命名された。原子炉内部で²³⁵Uの核分裂による中性子を²³⁸Uが吸収し、β壊変を２回経ることにより²³⁹Puが生成する。このプルトニウムも核分裂を起こしエネルギーを発生するため、核燃料となるが極めて毒性が強く、体内に入ると強い放射能を出し続ける危険な物質である。また²³⁵Uよりも少量でも核兵器の材料となるため、国際原子力機関IAEAにより、移動および所有が厳しく制限され管理されている。
　単体は銀白色の金属であり空気中では酸化されやすく、希塩酸および希硫酸にたやすく溶解する。水溶液中では３価Pu³⁺および４価Pu⁴⁺の状態が安定であるが、Pu⁴⁺は加水分解しやすい。

放射性元素

自然界における存在

　ウラン鉱中に²³⁸Uの自発核分裂の結果、他の²³⁸U原子核が中性子を吸収し、β壊変を２回経て生成した²³⁹Puがウラン１トンに対し数μg存在している。最も長寿命の²⁴⁴Puは天然に存在の可能性が考えられるが、この半減期では地球の年齢である４６億年の時間で最初の量の10^-17程度になり、検出できる限界付近であるといえる。

工業的用途

　原子炉内部で使用済みのウラン燃料棒中に生成したプルトニウムは、燃料棒を硝酸に溶解し、担体を用いて沈殿させることにより分離回収される。このプルトニウムは再び原子炉で核分裂させることができるため、核燃料としての用途が考えられ、またプルトニウムの大量保有は核兵器製造に転用されることが懸念されるため、消費する必要性からプルトニウムをウラン燃料に混合して原子炉で燃やす「プルサーマル」が計画されているが、安全性が問題視されている。
　人工衛星に搭載する原子力電池の放射線源として用いられる。

主な化合物

化合物中ではプルトニウム原子の酸化数は+3および+4をとることが多い。

PuH₃	水素化プルトニウム(Ⅲ)	Plutonium(Ⅲ) Hydride
PuO₂	酸化プルトニウム(Ⅳ)	Plutonium(Ⅳ) Oxide
Pu(NO₃)₄·5H₂O	硝酸プルトニウム(Ⅳ)五水和物	Plutonium(Ⅳ) Nitrate Pentahydrate

電子配置	1s²2s²2p⁶3s²3p⁶3d¹⁰4s²4p⁶4d¹⁰4f¹⁴5s²5p⁶5d¹⁰5f⁵6s²6p⁶6d¹7s² [Rn]5f⁵6d¹7s²
第一イオン化エネルギー	584.7 kJ/mol	6.026 eV
電子親和力	kJ/mol	eV

密度	19.84 g/cm³ (25℃)
結晶格子	単斜格子( )　a=4.8244Å, b=6.1835Å, c=10.973Å, α=101.81°
熱容量Cp（比熱）25℃	32.89 J/mol K (0.0329 cal/g K)
融点	639.5℃
沸点	3230℃

地殻中存在比	ppm
海水中存在比	ppm
大気中存在比
宇宙存在比(Si=10⁶)

同位体
核種	相対質量	スピンパリティー	半減期	天然存在比	壊変
²³⁶Pu	236.046057964	0⁺	2.858 yr	-	α, SF1.37×10^-7
²³⁷Pu	237.048409658	7/2^-	45.2 d	-	EC99.9958, α0.0042
²³⁸Pu	238.049559894	0⁺	87.74 yr	-	α, SF1.85×10^-7, Si1.4×10^-14, Mg6×10^-15
²³⁹Pu	239.052163381	1/2⁺	2.411×10⁴ yr	trace	α, SF3.0×10^-10
²⁴⁰Pu	240.053813545	0⁺	6.564×10³ yr	-	α, SF5.75×10^-6
²⁴¹Pu	241.056851456	5/2⁺	14.35 yr	-	β^-＞99.997, α0.00245, SF2.4×10^-14
²⁴²Pu	242.058742611	0⁺	3.733×10⁵ yr	-	α, SF5.54×10^-4
²⁴⁴Pu	244.064203907	0⁺	8.08×10⁷ yr	-	α99.879, SF0.121, 2β^-＜7.3×10^-9
²⁴⁶Pu	246.070204627	0⁺	10.84 d	-	β^-
²⁴⁷Pu	247.07407		2.27 d	-	β^-

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