性質および反応
1932年Chadwickにより、γ線より透過力が強い放射線は質量がほぼ陽子に等しく電荷を持たない粒子であることが見出された。ヘリウムの原子核は水素原子核(陽子)の約4倍の質量を持つが電荷が2倍であることから、Heisenbergは原子核が陽子および中性子と呼ばれる核子からなることを提唱した。
ウランなどの原子の核分裂により生成し、このとき発生する中性子線は別のウラン原子に衝突し連鎖的に核分裂を起こさせる。電荷を持たないため、磁界の中で曲げたり加速することができず、原子核に衝突するまで直進し続けるため、制御が困難な素粒子である。
ウランの核分裂の例 |
235U + 1n → 134Te + 100Zr + 21n 235U + 1n → 143Ba + 90Kr + 31n |
放射性
自然界における存在
地上ではウランなどの自発核分裂により極少量生成する。太陽および超新星爆発などにより発生した宇宙線は主に陽子からなり、これが大気圏に突入し分子に衝突すると、中性子が遊離する。
工業的用途
中性子の波動性を利用した回折では、X線のように原子番号の小さい原子による散乱が弱くなることが無いため、結晶構造解析において水素原子の位置を決定するために用いられる。
226Raおよび252Cfなどの中性子源が核分裂開始材として用いられる。また232Thおよび238Uなど原子炉内で核分裂を起こしにくい天然存在核種に中性子を吸収させ、β壊変を起こさせると、核燃料として利用可能な233Uおよび239Puが得られる。
中性子源からの放射 |
ラジウムからのα線の放射 |
226Ra → 222Rn + 4He |
α線とベリリウム原子との核反応 |
4He + 9Be → 12C + 1n |
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