性質および化学反応
単体は銀白色の金属元素であるが、空気中で酸化されやすく、希塩酸に速やかに溶解し水素を発生するが、黒色のThH(OH)2Clを含む残渣を残す。化合物は同族のセリウムとは異なり、3価の状態は極めて不安定で、4価の陽イオンTh4+が安定である。Th4+は4価の金属陽イオンとしては半径が大きく(1.08Å)最も加水分解しにくいものであるが、それでもアクアイオンはギ酸と同程度の酸性を示す。(pKa = 3.89)
塩酸との反応 |
Th + 4HCl → ThCl4 + 2H2 Th + HCl + 2H2O → ThH(OH)2Cl + H2 |
トリウムイオンの加水分解(酸解離平衡) |
[Th(H2O)6]4+ [Th(OH)(H2O)5]3+ + H+ |
K = 1.3×10-4 |
放射性元素
自然界における存在
トリウムを主体とする鉱物は方トリウム鉱ThO2およびトール石ThSiO4であり、希土類鉱物のモナズ石(La,Ce)PO4にもCeの数%がThに置換されて含まれている。トリウム鉱物など放射性および希元素鉱物は花崗岩に多く集中しペグマタイト中に結晶を見出すことが多い。元素存在度はウランの4倍程度であるが、ウランと同様、地殻に濃縮されており、地球内部および隕石中での存在度は極めて低い。
天然に存在する同位体のほとんどが最も半減期の長い232Thであるが、230Thおよび234Thもウラン系列の中間壊変生成物として定常的に存在し、227Thおよび231Thはアクチニウム系列、228Thはトリウム系列の中間壊変生成物として定常的に存在する。
方トリウム鉱 マダガスカル産
工業的用途
酸化トリウムThO2は炎の中で明るく輝き、ガスマントルに用いられていたが、白熱電球の発明により次第に用いられなくなった。トリウムに中性子を照射し、232Th(n,γ)233Thの反応に続いてβ壊変を2回繰り返し生成する233Uは核燃料として用いられる。
主な化合物
化合物中ではトリウム原子の酸化数は+4をとることが多い。
ThO2 |
酸化トリウム(Ⅳ) |
Thorium(Ⅳ) Oxide |
Th(NO3)4·4H2O |
硝酸トリウム(Ⅳ)四水和物 |
Thorium(Ⅳ) Nitrate Tetrahydrate |
|