性質および化学反応
単体は無色無臭の気体で、希ガスに属し単原子分子として存在するが、希ガス中では最も安定な化合物をつくる。1962年にN. Bartlettは酸素分子の第一イオン化エネルギー12.07 eVがキセノンの第一イオン化エネルギーに近く、酸素分子はO2 + PtF6 → [O2+][PtF6-]という反応を起こすことから、キセノンも同様にPtF6と反応して[Xe+][PtF6-]を生成するであろうと考えた。この反応により得られた赤色結晶は実際には[XeF+][PtF6-]であったが、希ガス化合物の化学の分野を開拓したことには違いない。
過剰のフッ素との混合物を高圧下で反応させると二フッ化キセノンが生成し、ニッケル容器中で400℃, 6 atmで数時間反応させると四フッ化キセノンが生成する。
六フッ化白金との反応 |
Xe + 2PtF6 → [XeF+][PtF6-] + PtF5 |
フッ素との反応(高圧) |
Xe + F2 → XeF2 |
フッ素との反応(400℃) |
Xe + 2F2 → XeF4 |
自然界における存在
大気中に0.087vol ppmとごくわずかに含まれ、天然ガス中にも微量含まれているが、稀少な気体で高価である。
通常、陽子、中性子伴に偶数の核種のほうが片方が奇数の核種よりも安定で多く存在しているが、中性子が奇数の129Xeは例外的に多く存在している。これは半減期が1570万年の消滅核種129Iがβ壊変した結果の生成物である。
工業的用途
低圧のキセノン中で放電することにより発光するキセノンランプはカメラのストロボなどに用いられる。
主な化合物
化合物中のキセノンの酸化数には+2,+4,+6,+8などが存在するが、いずれも不安定である。
XeF2 |
二フッ化キセノン |
Xenon Difluoride |
XeF4 |
四フッ化キセノン |
Xenon Tetrafluoride |
XeF6 |
六フッ化キセノン |
Xenon Hexafluoride |
XeO4 |
四酸化キセノン |
Xenon Tetraoxide |
Na4XeO6·8H2O |
過キセノン酸ナトリウム八水和物 |
Sodium Perxenate Octahydrate |
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