性質および化学反応

 銀灰色の重い金属元素で、空気中では表面から徐々に酸化され七酸化二レニウムRe2O7を生成する。希塩酸とは反応しにくいが、硝酸および過酸化水素により酸化され過レニウム酸HReO4を生成し溶解する。融点はタングステンに次いで高く、塊状金属を得るには粉末を鍛造するほうが容易である。
 元素名はライン川のラテン語名Rhenusから命名された。
レニウムの単体

自然界における存在

 レニウムは存在度が非常に小さな元素であるが、主にコルンブ石(Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6および輝水鉛鉱MoS2中ににわずかに含まれる。この稀少さ故に安定元素としては、発見が最も遅いものであった。
 1908年、小川正孝はセイロン島で発見された方トリウム鉱ThO2を分析し、微量の新元素を抽出し、その塩化物の重量分析から原子量が100程度の当時未発見であった43番元素であろうと結論付け、「ニッポニウム」と命名した。しかしこの発見は他の研究者の確認が得られず、またその後の人工元素としてのテクネチウムの発見もあり迷宮入りしていた。最近東北大学名誉教授である吉原賢二により小川の研究結果が再検討され、小川がニッポニウムの原子量測定に用いた塩化物の化学式をMCl2と仮定していたところを、レニウムで知られている安定なオキシ塩化物MOCl4として再計算すると原子量は185になり、発行スペクトルもレニウムに一致することが見出された。すなわち1925年のNoddack, Berg, Tackeによるコルンブ石のX線スペクトルからのレニウム発見以前に、小川がレニウムを新元素として単離していたことになる。
 火山ガス昇華物として、稀にレニウム含量の高い輝水鉛鉱が見出されることがあるが、1992年択捉島の茂世路山で硫化レニウムReS2を主成分とする鉱物が発見された。

 参考文献:吉原賢二,小川正孝の栄光と挫折,化学史研究,Vol.24,pp295-305,(1997)

工業的用途

 レニウムは産出が少なく高価なため、広く用いられてはいないが、耐熱性が強いため質量分析計のフィラメントおよび熱電対の材料として用いられる。また石油の水素化触媒に用いられる。

主な化合物

化合物中ではレニウム原子は7価として存在することが多い。

Re2O7 酸化レニウム(Ⅶ) Rhenium(Ⅶ) Oxide
HReO4 過レニウム酸 Perrenic Acid



電子配置
1s22s22p63s23p63d104s24p64d104f145s25p65d56s2
[Xe]4f145d56s2
第一イオン化エネルギー
749.0 kJ/mol
7.76 eV
電子親和力
14 kJ/mol
0.15 eV
密度
21.02 g/cm3 (20℃)
結晶格子
六方最密充填格子(hcp) a=2.761Å, c=4.458Å
熱容量Cp(比熱)25℃
25.48 J/mol K (0.0327 cal/g K)
融点
3180℃
沸点
5596℃
地殻中存在比
0.001 ppm
海水中存在比
4×10-3 ppb
大気中存在比
-
宇宙存在比(Si=106)
0.0517


同位体
核種
相対質量
スピンパリティー
半減期
天然存在比
壊変
182Re

181.95121008

7+
2.67 d
-
EC
183Re

182.950819841

5/2+
70.0 d
-
EC
184Re

183.952520756

3-
38.0 d
-
EC+β+
185Re

184.952954982

5/2+
stable
37.40%
-
186Re

185.954986084

1-
3.7186 d
-
β-92.53, EC7.47
186mRe

185.955146042

(8+)
2.0×105 yr
-
IT
187Re

186.955753109

5/2+
4.35×1010 yr
62.60%
β-, α<1×10-4


n
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
Rb
Sr
Y
Zr
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
Cs
Ba
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
Fr
Ra
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
Rg
Uub
Uut
Uuq
Uup
Uuh
Uus
Uuo
La
Ce
Pr
Nd
Pm
Sm
Eu
Gd
Tb
Dy
Ho
Er
Tm
Yb
Lu
Ac
Th
Pa
U
Np
Pu
Am
Cm
Bk
Cf
Es
Fm
Md
No
Lr



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