性質および化学反応

 1789年にM.H.Klaprothによりピッチブレンドから抽出され、新元素であることが確認され、1781年に発見された惑星である天王星Uranusの名前をとって、命名された。ウランが放射性元素であることは1896年にH.Becquerelにより鉱石を写真乾板に乗せておくと感光していることから見出された。
 単体は銀白色の金属元素であるが、空気中で速やかに酸化され、酸化皮膜による内部の保護はなく、酸化は内部まで進行する。熱水と反応すると二酸化ウランおよび水素化物の混合物を生成する。200℃程度の水蒸気は金属ウランと非常に激しく反応し、酸化物および水素化物の混合物となる。希塩酸に速やかに溶解し、水素化物を含む黒色残渣を残す。水溶液中では6価のウラニルイオンUO22+が安定である。3価の陽イオンは酸化されやすく4価に変化しやすい。

高温水蒸気との反応 7U + 6H2O → 3UO2 + 4UH3

ウランの単体 人形峠展示館

放射性元素

自然界における存在

 希土類のリン酸塩鉱物中を置換して存在し、ウラン独自の鉱物としては酸化物およびリン酸塩が多く、閃ウラン鉱UO2、リン灰ウラン鉱Ca(UO2)2(PO4)2·12H2Oなどがある。海水中にも[UO2(CO3)3]4-の形で微量溶存している。
 ウランはマントルを形成する橄欖岩および地殻下層部の玄武岩などのような苦鉄質岩石に取り込まれにくいため、トリウムおよび希土類と同様に地球表層部の花崗岩に集中して濃縮されているものと考えれれる。隕石中のウランおよびトリウムの含有量が、地球表面の岩石中よりもはるかに低いことがこのことを示唆している。
 天然に存在する同位体のうち234Uは、238Uの中間壊変生成物として定常的に存在するものである。
リン灰ウラン鉱 ラピス大歩危
紫外線を照射したリン灰ウラン鉱

工業的用途

 かつてはガラスを黄緑色に着色するために使用されていた。このウランガラスはソーダまたはカリガラスに0.1%程度の二ウラン酸ナトリウムNa2U2O7を添加したもので、紫外線により美しい緑色に発光するため珍重されているが、最近では原料が放射性物質としての規制を受けるためほとんど製造されていない。
 天然ウラン中に0.72%含まれている235Uは核分裂を起こし、1グラムの235Uの放出するエネルギーは石炭約2トンの燃焼熱に相当するため、核燃料として用いられる。天然ウラン中の235Uの同位体比では連鎖反応を起こすだけの充分な中性子密度が得られないため、235U同位体比を3%程度に高めた濃縮ウランが原子力発電用の核燃料として用いられる。天然ウランの大部分を占める238Uは原子炉内でほとんど核分裂しない。
 ウランの濃縮は、加熱により昇華させた六フッ化ウランの蒸気を高速で回転させ、分子量の違いによる拡散速度の違いにより同位体分離を行う。濃縮ウラン製造と同時に235U濃度の低い劣化ウランが大量に生成し、この廃物利用として鉄板をも貫通する劣化ウラン弾が造られ、1991年の湾岸戦争で用いられた。現在でも劣化ウラン弾が使用されたイラクの各地で放射能汚染が問題となっている。

主な化合物

UO2 酸化ウラン(Ⅳ) Uranium(Ⅳ) Oxide
U3O8 八酸化三ウラン Triuranium Octaoxide
UF4 四フッ化ウラン Uranium(Ⅳ) Fluoride
UF6 六フッ化ウラン Uranium(Ⅵ) Fluoride
UO2(NO3)2·6H2O 硝酸ウラニル六水和物 Uranyl Nitrate Hexahydrate

四フッ化ウラン 人形峠展示館
六フッ化ウラン 人形峠展示館



電子配置
1s22s22p63s23p63d104s24p64d104f145s25p65d105f36s26p66d17s2
[Rn]5f36d17s2
第一イオン化エネルギー
597.64 kJ/mol
6.194 eV
電子親和力
  kJ/mol
  eV
密度
18.95 g/cm3 (r.t.)
結晶格子
斜方格子 a=2.854Å, b=5.869Å, c=4.955Å
熱容量Cp(比熱)25℃
27.665 J/mol K (0.02778 cal/g K)
融点
1132.3℃
沸点
4172℃
地殻中存在比
1.8 ppm
海水中存在比
3.3 ppb
大気中存在比
-
宇宙存在比(Si=106)
0.009


同位体
核種
相対質量
スピンパリティー
半減期
天然存在比
壊変
230U

230.033939784

0+
20.8 d
-
α, SF<1.4×10-10
231U

231.036293704

(5/2 )
4.2 d
-
EC, α0.0055
232U

232.037156152

0+
68.9 yr
-
α, 24Ne9×10-11
233U

233.039635207

5/2+
1.592×105 yr
-
α, SF<6×10-11, 24Ne<9.5×10-11
234U

234.040952088

0+
2.455×105 yr
 0.0054%
α, SF1.64×10-9, Mg1.4×10-11, Ne9×10-12
235U

235.043929918

7/2-
7.038×108 yr
 0.7204%
α, SF7.0×10-9, 24Ne+25Ne8×10-10
236U

236.045568006

0+
2.34×107 yr
-
α, SF9.4×10-8
237U

237.048730184

1/2+
6.75 d
-
β-
238U

238.050788247

0+
4.468×109 yr
99.2742%
α, SF5.45×10-5, 2β-2.2×10-10
239U

239.054293299

5/2+
23.45 m
-
β-
240U

240.056591988

0+
14.1 hr
-
β-


n
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
Rb
Sr
Y
Zr
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
Cs
Ba
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
Fr
Ra
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
Rg
Uub
Uut
Uuq
Uup
Uuh
Uus
Uuo
La
Ce
Pr
Nd
Pm
Sm
Eu
Gd
Tb
Dy
Ho
Er
Tm
Yb
Lu
Ac
Th
Pa
U
Np
Pu
Am
Cm
Bk
Cf
Es
Fm
Md
No
Lr



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