性質および化学反応

 銀灰色のもろい結晶性固体で、金属元素に分類されているが、延性および展性に乏しく外見もヒ素に類似し、半金属と称されることがある。元素記号はギリシャ語のStibiに由来する。塩酸および希硫酸とはほとんど反応しないが、酸化作用のある硝酸と反応し、3価の陽イオンSb3+を生成するが加水分解しやすい。
 単体の蒸気を急冷することにより、四面体型4原子分子Sb4で構成されるもろい黄色固体の同素体が得られる。
アンチモンの単体

自然界における存在

 アンチモンは硫化物として存在することが多く、輝安鉱Sb2S3および濃紅銀鉱Ag3SbS3などの形で産出する。
 愛媛県西条市の市之川鉱山はわが国で最も古い鉱山の一つであり、輝安鉱の大型結晶を産出したことで世界的に有名であるが、これらの多くは国外に流出し立派なものはほとんど海外の博物館に展示されている。
輝安鉱 市之川鉱山産
市之川鉱山跡

輝安鉱 中国湖南省産

工業的用途

 鋳造しやすく美術工芸品および、鉛、スズおよびアンチモン合金は活字に用いられる。日本初の貨幣と考えられる、和同開珎および富夲銭には銅に数%のアンチモンが含まれていることが判明し、合金の融点を下げて鋳造しやすくしたものと考えられる。
 酒石酸アンチモニルカリウムK2[Sb2(C2H2(COO)2O2)2]·3H2Oは吐酒石とも呼ばれ、体内の毒素を排出するために用いられたことがあるが、それ自体が有毒である。さらに金属アンチモンの錠剤も下剤としての作用を持ち、排泄物からこの錠剤が回収され、洗浄されて何度も用いられたことから、「永遠丸」とも呼ばれた。

主な化合物

化合物中のアンチモンの酸化数には-3, +3, +5などが存在する。

Sb2S3 硫化アンチモン(輝安鉱) Antimony Trisulfide
SbF5 五フッ化アンチモン Antimony Pentafluoride
Na[Sb(OH)6] ヘキサヒドロキソアンチモン酸ナトリウム Sodium Hexahydroxoantimonate



電子配置
1s22s22p63s23p63d104s24p64d105s25p3
[Kr]4d105s25p3
第一イオン化エネルギー
833.8 kJ/mol
8.641 eV
電子親和力
103 kJ/mol
1.07 eV
密度
6.691 g/cm3 (20℃)
結晶格子
三方格子( ) a=4.507Å, α=57.1°
熱容量Cp(比熱)25℃
25.23 J/mol K (0.0495 cal/g K)
融点
630.74℃
沸点
1587℃
地殻中存在比
0.2 ppm
海水中存在比
0.2 ppb
大気中存在比
-
宇宙存在比(Si=106)
0.309


同位体
核種
相対質量
スピンパリティー
半減期
天然存在比
壊変
119Sb

118.903942009

5/2+
1.59 d
-
EC
121Sb

120.903815686

5/2+
stable
57.21%
-
122Sb

121.905173651

2-
2.7238 d
-
β-97.0, EC3.0, β+0.0063
123Sb

122.904213970

7/2+
stable
42.79%
-
124Sb

123.905935743

3-
60.20 d
-
β-
125Sb

124.905253818

7/2+
2.7582 yr
-
β-
126Sb

125.90724748

(8-)
12.46 d
-
β-
127Sb

126.906923609

7/2+
3.85 d
-
β-


n
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
Rb
Sr
Y
Zr
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
Cs
Ba
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
Fr
Ra
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
Rg
Uub
Uut
Uuq
Uup
Uuh
Uus
Uuo
La
Ce
Pr
Nd
Pm
Sm
Eu
Gd
Tb
Dy
Ho
Er
Tm
Yb
Lu
Ac
Th
Pa
U
Np
Pu
Am
Cm
Bk
Cf
Es
Fm
Md
No
Lr



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