コラム

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このページは、世の中のいろいろな社会現象を数学的に解析してみるページです。
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1人を選ぶのに何回じゃんけんしたらよいの?

「おつかい」に行く1人を決まるときなど,何人かでじゃんけんして決めることがあります. 2,3人ならすぐに決着がつくのに, 5,6人以上だとよくあいこになって,いつになっても終わりません. 1人が勝ち残るまでいったい何回じゃんけんをしたらよいでしょうか. いま,n人でじゃんけんをして1回めがあいこになる確率をanとし, 誰か1人が勝ち残る(決着がつく)までの平均回数(期待値)をbnとして, an,bnを計算します.

2人の場合

1回めで決着がつくのは確率6/9=2/3で,あいこになるのはa2=3/9=1/3です. 1回めがあいこのとき,2回目で決着がつくのはやはり確率2/3で,あいこになるのは 1/3です.以下同様に考えると,決着がつくまでの平均回数b2
   b2=2/3×1+1/3×2/3×2+(1/3)2×2/3×3+(1/3)3×2/3×4+…
で求まります.この和は(高校数学の数列でよく出る形であり)
1/3×b2=    1/3×2/3×1+(1/3)2×2/3×2+(1/3)3×2/3×3+…
として,上下そろえてひくと
2/3×b2=2/3+1/3×2/3+(1/3)2×2/3+(1/3)3×2/3+…
    =(2/3)/(1-1/3)=1 (等比級数の和の公式から)
 ∴ b2=3/2=1.5

3人の場合

1回めで誰か1人が勝つ(決着がつく)のは確率9/27=1/3で, 2人が勝つのも9/27=1/3で,あいこになるのもa3=9/27=1/3です. 2人残った場合,そこから決着がつくまでには平均b2回かかり, 3人があいこになった場合,そこから決着がつくまでには平均b3回かかると考えられます. よって,
   b3=1/3+1/3×(1+b2)+1/3×(1+b3)
が成り立ち,b2=3/2 を代入して解くと,b3=9/4=2.25 が得られます.

n人の場合

n人でじゃんけんをしたとき,すべての出し方は3n通りです. そのうち,あいこにならないのは場にグー・チョキ・パーのうちのどれか2種類しか出ていないときです. その2種類(3通りある)が決まったとき,ひとりひとりの出し方を考えると2n-2通りあります. よって,あいこにならない確率は3×(2n-2)/3n=(2n-2)/3n-1となるので,
   an=1-(2n-2)/3n-1
となります.また,3人の場合と同様の考え方により,bnはb2,b3,…,bn-1の式で表すことができ, いもづる式にその値を計算することができます.結果を表およびグラフにすると次のようになります.

n an bn
 2  0.333 1.50
 3  0.333 2.25
 4  0.481 3.21
 5  0.630 4.49
 6  0.745 6.22
 7  0.827 8.65
 8  0.884 12.10
 9  0.922 17.09
 10  0.948 24.35
 15  0.9931 158.87
 20  0.99910 1142.90
 30  0.999984 64201.24
 40  0.9999997 3688328.07
   

n人でじゃんけんをしたとき
1回めがあいこになる確率an


n人でじゃんけんをしたとき
誰か1人が勝ち残るまでの平均回数bn

さらに,じゃんけんをする回数を制限したとき,その回数までに誰か1人が勝ち残る (決着がついている)確率の推移を調べると次のようなグラフになります(割と簡単に計算できます)。 例えば,4人でじゃんけんをするとき,5回までに決着がついている確率は約89.1%, 10回までに決着がついている確率は約99.6%です.


じゃんけんをする回数を制限したとき
その回数までに誰か1人が勝ち残る確率

じゃんけんをするときは急いでいるときが多いですので, せいぜい10回ぐらいで決着してほしいものですが, このグラフから見ると5人以下なら全員でじゃんけんして決まるのは適していると思われます. 6人でもまあ許せるところですが,7人以上なら全員でじゃんけんするのは 適していないように思われます.


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