コラム

コラム(バックナンバー)

ご意見は kojo@sci.niihama-nct.ac.jp あてにお願いします。

選択肢の問題・・・なんで1つも当たらないの?

試験で、「10個の問いに対して、あとの10個の選択肢から1つずつ選んで答えよ」 という問題があったとします。例えば、

問題. 次の作家の文学作品を後ろの選択肢から選び、記号で答えよ。

1.志賀直哉 ( ) 2.幸田露伴 ( ) 3.谷崎潤一郎 ( ) 4.島崎藤村 ( ) 5.堀辰雄 ( )
6.三島由紀夫 ( ) 7.芥川龍之介 ( ) 8.菊池寛 ( ) 9.三好達治 ( ) 10.横光利一 ( )

ア.夜明け前 イ.風立ちぬ ウ.河童 エ.旅愁 オ.細雪
カ.潮騒 キ.五重塔 ク.恩讐の彼方に ケ.暗夜行路 コ.測量船

このとき、不勉強のせいか、あるいは難問のせいか、全くわからないということがあります。 そんなとき、とりあえずあてずっぽでうめておいたが、 後で答案が返ってきた(答え合わせした)とき、 1つも当たってないということがあります。 (10個もあるのに)なんで1つも当たらないのか不満に思うかもしれません。 そこで、その確率を計算してみます。

これは、1から n までの数字を書いたカードから無作為に1枚ずつ引いていって、 例えば5枚めに引いたカードが5であるというような、 これまでに引いたカードの枚数とカードの番号がぴったり一致するのが何回あったか を考えることと同じです。

n=3 のとき、すべてのパターン(6通り)について一致する回数を調べると、

123 3回
32 1回
21 1回
231 0回
312 0回
 1回
 なので、 
0問正解 2通り
1問正解 3通り
2問正解 0通り
3問正解 1通り

となります。 n=4 のときは n=3 のときの正解数で分類して考えます。(4の位置に注意して見て下さい。)

(n=3 のときの0問正解
231に対応するもの)
 231 1問正解 4312 0問正解  2413 0問正解 2341 0問正解
(n=3 のときの1問正解
132に対応するもの)
 32 2問正解 4321 0問正解  423 1問正解 342 0問正解
(n=3 のときの3問正解
123に対応するもの)
 1234 4問正解 4231 2問正解  2 2問正解 1243 2問正解

よって、全24通りは、

0問正解 9通り(=3*2+1*3)
1問正解 8通り(=2+2*3+2*0)
2問正解 6通り(=3+1*0+3*1)
3問正解 0通り(=0)
4問正解 1通り(=1)

と分類できます。 このようにして、帰納的に個数および確率を計算していくと、次の表のようになります。

選択肢の数2個3個4個5個6個7個8個9個10個
答え方の
パターン
2通り6通り24通り 120通り720通り5040通り 40320通り362880通り3628800通り
0問正解
(確率)
1通り
(50.0%)
2通り
(33.3%)
9通り
(37.5%)
44通り
(36.6%)
265通り
(36.8%)
1854通り
(36.7%)
14833通り
(36.7%)
133496通り
(36.7%)
1334961通り
(36.7%)
1問正解
(確率)
0通り
(0.0%)
3通り
(50.0%)
8通り
(33.3%)
45通り
(37.5%)
264通り
(36.6%)
1855通り
(36.8%)
14832通り
(36.7%)
133497通り
(36.7%)
1334960通り
(36.7%)
2問正解
(確率)
1通り
(50.0%)
0通り
(0.0%)
6通り
(25.0%)
20通り
(16.6%)
135通り
(18.7%)
924通り
(18.3%)
7420通り
(18.4%)
66744通り
(18.3%)
667485通り
(18.3%)
3問正解
(確率)
1通り
(16.6%)
0通り
(0.0%)
10通り
(8.3%)
40通り
(5.5%)
315通り
(6.2%)
2464通り
(6.1%)
22260通り
(6.1%)
222480通り
(6.1%)
4問正解
(確率)
1通り
(4.1%)
0通り
(0.0%)
15通り
(2.0%)
70通り
(1.3%)
630通り
(1.5%)
5544通り
(1.5%)
55650通り
(1.5%)
5問正解
(確率)
1通り
(0.8%)
0通り
(0.0%)
21通り
(0.4%)
112通り
(0.2%)
1134通り
(0.3%)
11088通り
(0.3%)
6問正解
(確率)
1通り
(0.1%)
0通り
(0.0%)
28通り
(0.0%)
168通り
(0.0%)
1890通り
(0.0%)
7問正解
(確率)
1通り
(0.0%)
0通り
(0.0%)
36通り
(0.0%)
240通り
(0.0%)
8問正解
(確率)
1通り
(0.0%)
0通り
(0.0%)
45通り
(0.0%)
9問正解
(確率)
1通り
(0.0%)
0通り
(0.0%)
10問正解
(確率)
1通り
(0.0%)

このように、10個の選択肢から選ぶ問題で1問も正解しない確率は約36.7%もあります。 さらにこの表からわかるように

選択肢(問題数)が多くなっても、 1問も正解しない確率は約36.7%と変わらない

ことに気がつきます。 (この36.7%は実は 1/e です。 ただし、 e は微分積分で出てくる自然対数の底(ネイピアの数) e=2.718... です。 これは理工系大学の1年生の知識があれば証明できます。) また、この表からもわかりますが

あてずっぽで答えをかいたときの正解数の平均は1問

です。 よく、全部はずれるのはイヤなので、 すべて「ア」にするという考えもあるかと思います。 それについては次のように結論づけられます。

すべて「ア」にしたら必ず1問は当たるが、1問しか当たらない。
それでは先生(世間)は評価しないので、 頭をふりしぼって考えるべきだ